自宅に設置したNASやRaspberry Pi、Webサーバー、VPNサーバー、ネットワークカメラなどへインターネット側からアクセスするときに必要になるのが「ポートフォワーディング(ポート開放)」です。
以前は、プロバイダーからグローバルIPv4アドレスが割り当てられ、ルーターでポートフォワーディングを設定する方法が一般的でした。
しかし現在の日本の光回線では「IPv6 IPoE」と「IPv4 over IPv6」が急速に普及しています。
ここで問題になるのが、
「IPoEにするとポート開放できないの?」
という疑問です。
結論から言うと、
IPoEだからポート開放できないわけではありません。
重要なのはプロバイダー名よりも、そのプロバイダーがIPv4通信にどの方式を採用しているかです。
代表的なものには、
- IPv4 PPPoE
- MAP-E
- DS-Lite
- IPIP(固定IPv4)
があります。
この記事では、日本国内の主要なインターネット接続サービスについて、ポートフォワーディングの可否という観点から整理します。
※プロバイダーのサービス内容は変更されることがあります。また、同じプロバイダーでも契約プランや回線によって接続方式が異なる場合があります。契約前には必ず各事業者の最新情報を確認してください。
そもそもポートフォワーディングとは?
一般家庭では、ルーターの内側にあるパソコンやRaspberry Piなどには、
192.168.1.10
のようなプライベートIPアドレスが割り当てられています。
通常、インターネット側からこのアドレスへ直接アクセスすることはできません。
そこでルーターに、
「外部からTCP 50000番に通信が来たら、192.168.1.10の22番へ転送する」
といった設定を行います。
これがポートフォワーディングです。
例えば、
インターネット
↓
自宅のグローバルIPv4アドレス:50000
↓
ルーター
↓
192.168.1.10:22
↓
Raspberry Pi
という構成にすれば、外部からRaspberry PiのSSHへ接続できます。
昔ながらのIPv4 PPPoEなら基本的にポート開放可能
従来のIPv4 PPPoE接続では、ユーザーのルーターにグローバルIPv4アドレスが割り当てられるサービスが一般的でした。
この場合は比較的簡単です。
ルーターの「ポート転送」「ポートマッピング」「静的IPマスカレード」などの機能を設定すれば、外部からLAN内の機器へ通信を転送できます。
そのため、
IPv4 PPPoE+グローバルIPv4アドレス
→ 原則としてポートフォワーディング可能
と考えることができます。
ただし、プロバイダー側でCGNATなどを採用している場合は例外があります。
IPoEになると話が少し複雑になる
現在のフレッツ光や光コラボでは、IPv6 IPoEを利用するサービスが広く普及しています。
さらにIPv4のWebサイトなどへアクセスするために「IPv4 over IPv6」という技術が使われます。
国内でよく利用されている代表例が、
「v6プラス」
OCNバーチャルコネクト
BIGLOBE IPv6オプション
transix
クロスパス
v6コネクト
などです。
ところが、これらはすべて同じ仕組みではありません。
大きく、
MAP-E
と
DS-Lite
に分かれます。
そして、この違いがポートフォワーディングの可否に大きく影響します。
MAP-Eなら「制限付き」でポート開放できる
MAP-Eでは、1つのグローバルIPv4アドレスを複数ユーザーで共有します。
その代わり、それぞれのユーザーに使用可能なTCP/UDPポート番号が割り当てられます。
つまり、
自分に割り当てられたポート番号ならポートフォワーディングできる
という仕組みです。
代表的なのがJPIXの「v6プラス」です。
「v6プラス」はIPv6 IPoEとIPv4 over IPv6を組み合わせたサービスで、IPv4通信にはMAP-Eが利用されます。
したがって通常の「v6プラス」では、ポート番号に制限はあるもののポートフォワーディングが可能です。
例えばSSHを公開したい場合、
外部50000番
↓
ルーター
↓
Raspberry Pi 22番
というように、自分に割り当てられている外部ポートを内部の22番へ転送できるルーターであれば運用できます。
逆に、
外部22番
↓
Raspberry Pi 22番
のように、好きな外部ポートを自由に指定できるとは限りません。
MAP-Eを利用する代表的なサービス
国内では、代表的に次のようなIPv4 over IPv6サービスがMAP-Eを利用しています。
| サービス | IPv4方式 | ポートフォワーディング |
|---|---|---|
| 「v6プラス」 | MAP-E | ○ 制限あり |
| OCNバーチャルコネクト | MAP-E | ○ 制限あり |
| BIGLOBE IPv6オプション | MAP-E | ○ 制限あり |
ただし、実際に設定できるかどうかは使用しているルーターにも左右されます。
MAP-Eに対応しているだけでなく、MAP-E環境でのポート転送設定に対応したルーターが必要です。
DS-Liteでは基本的にIPv4ポート開放ができない
一方、注意したいのがDS-Liteです。
DS-LiteでもIPv4アドレスを複数ユーザーで共有しますが、MAP-Eとは仕組みが異なります。
大きな違いはIPv4のNAT処理を行う場所です。
通常の家庭用IPv4接続では、
インターネット
↓
自宅ルーター【NAT】
↓
PC
となります。
一方、DS-Liteでは概念的には、
インターネット
↓
プロバイダー側設備【NAT】
↓
IPv6ネットワーク
↓
自宅ルーター
↓
PC
となります。
IPv4側のNATが自宅ではなく事業者側ネットワークに存在するため、自宅ルーターだけを設定して「インターネットからこのポートへの通信を自宅へ送ってください」と指定することが通常はできません。
そのため、
一般的なDS-Lite
→ IPv4ポートフォワーディング不可
と考えておくのが分かりやすいでしょう。
DS-Liteを利用する代表的なサービス
代表例には、
| サービス | IPv4方式 | 通常のIPv4ポートフォワーディング |
|---|---|---|
| transix | DS-Lite | × |
| クロスパス | DS-Lite | × |
| v6コネクト(DS-Lite) | DS-Lite | × |
などがあります。
例えばtransixのDS-Liteでは、グローバルIPv4アドレスを複数ユーザーで共有し、NAPTがtransixネットワーク内に存在します。
この点がMAP-Eとの大きな違いです。
DS-Liteでも「固定IPv4サービス」なら話が変わる
「じゃあtransixでは絶対にサーバー公開できないの?」
というと、そうとは限りません。
ここで登場するのが固定IPv4サービスです。
例えばtransixには通常のDS-Liteとは別に、IPv4 over IPv6の「固定IP(IPIP)」があります。
固定IPサービスでは、1回線にグローバルIPv4アドレスを割り当てることができ、インターネットVPN、監視カメラ、IoT機器などへ外部からアクセスする用途も公式に想定されています。
したがって、
通常のtransix(DS-Lite)
→ IPv4ポート開放 ×
transix固定IP(IPIP)
→ IPv4ポート開放 ○
という大きな違いがあります。
「v6プラス」にも固定IPv4がある
「v6プラス」にも固定IPv4サービスがあります。
通常のMAP-E版ではIPv4アドレスを共有するため、使用できるポート番号に制限があります。
一方、「v6プラス」固定IPサービスではMAP-EではなくIPIPトンネルを使用します。
JPIXの技術資料でも、固定IPv4サービスについて、MAP-E利用時のようなポート番号の制限がないことが説明されています。
つまり、
通常の「v6プラス」
→ MAP-E
→ ポート開放○、ただし使用可能ポートに制限あり
「v6プラス」固定IP
→ IPIP+専用IPv4
→ ポート開放○、MAP-Eのポート番号制限なし
という違いがあります。
WebサーバーやVPNサーバーなどを本格的に運用するのであれば、固定IPv4のほうが扱いやすいでしょう。
国内のIPv4 over IPv6をまとめると
ここまでを整理すると次のようになります。
| 接続方式 | 代表的サービス | ポート開放 | ポート制限 |
|---|---|---|---|
| IPv4 PPPoE+グローバルIPv4 | 従来型ISP | ○ | 基本なし |
| MAP-E | 「v6プラス」 | ○ | あり |
| MAP-E | OCNバーチャルコネクト | ○ | あり |
| MAP-E | BIGLOBE IPv6オプション | ○ | あり |
| DS-Lite | transix | × | ― |
| DS-Lite | クロスパス | × | ― |
| DS-Lite | v6コネクト | × | ― |
| 固定IPv4/IPIP | 「v6プラス」固定IP | ○ | MAP-E由来の制限なし |
| 固定IPv4/IPIP | transix固定IP | ○ | DS-Liteとは別方式 |
| 固定IPv4/IPIP | クロスパス固定IP系 | ○ | サービスによる |
| 固定IPv4/IPIP | v6コネクト固定IP系 | ○ | サービスによる |
「どのプロバイダーか」だけでは判断できない
ここが一番重要なポイントです。
ポートフォワーディングについて調べるとき、
「○○プロバイダーはポート開放できますか?」
と検索したくなります。
しかし現在は、プロバイダー名だけで判断するのは危険です。
同じISPでも、
契約している光回線
契約時期
IPv4 over IPv6サービス
固定IPオプションの有無
などによって接続方式が変わることがあります。
そのため、
「自分のプロバイダーはどこか?」
だけではなく、
「自分が利用しているIPv4 over IPv6方式は何か?」
を確認することが重要です。
ポート開放したい人は何を選べばいい?
用途別に考えてみましょう。
ポート番号は何でもいい
例えば、
Raspberry PiのSSH
自作IoT機器
ゲームサーバー
簡単な検証用サーバー
などで、
「外部ポート番号は50000番でも60000番でも構わない」
という場合です。
この場合はMAP-Eでも運用できる可能性があります。
自分に割り当てられたポート番号を確認し、そのポートからLAN内のサーバーへ転送します。
80番や443番などを自由に使いたい
Webサーバーなどで、
TCP 80
TCP 443
といった特定のポート番号をIPv4側で使いたい場合は、MAP-Eでは都合が悪くなることがあります。
このような用途では、
固定グローバルIPv4アドレスを利用できるサービス
のほうが適しています。
Raspberry PiやNASへ外からアクセスしたいだけ
この場合は、そもそもポートフォワーディングが必須とは限りません。
VPNやオーバーレイネットワークを利用して、
外出先PC
↓
VPN
↓
自宅Raspberry Pi
と接続する方法もあります。
この方法ならDS-Lite環境でも利用できる場合があります。
特に自分だけがNAS、Raspberry Pi、監視カメラなどへアクセスする用途では、インターネットへ直接ポートを公開しない構成も検討する価値があります。
まとめ
現在の日本のインターネット回線では、
「IPoE=ポート開放できない」
というわけではありません。
重要なのはIPv4通信の方式です。
覚えておくと分かりやすいのは、
PPPoE+グローバルIPv4
→ ポート開放可能
MAP-E
→ ポート開放可能。ただし使用できる外部ポートに制限あり
DS-Lite
→ 通常のIPv4ポート開放は原則不可
IPoE+固定IPv4/IPIP
→ ポート開放可能
という違いです。
これからプロバイダーを契約する予定で、自宅サーバー、NAS、Raspberry Pi、VPN、ネットワークカメラなどを外部公開したいのであれば、単純に「IPv6対応」「IPoE対応」という表示だけを見るのではなく、
IPv4 over IPv6の方式は何か?
MAP-EなのかDS-Liteなのか?
固定IPv4サービスはあるか?
使用予定のルーターでポート転送できるか?
まで確認してから契約することをおすすめします。
特に「好きなIPv4ポートを自由に開放したい」という用途では、固定IPv4に対応したIPoEサービスが非常に分かりやすい選択肢になります。
※「v6プラス」および「v6plus」は、株式会社JPIXの登録商標または商標です。




